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井上礼之の名言69件

自主経営を貫くが、自前主義には執着しない。自主経営とは、「ありたい姿」や「あるべき姿」を従業員と共有しながら、経営者が戦略の実行局面で幅広い選択肢を持って、主体的に意思決定できることを指します。あるところでは自前主義に徹底的にこだわって差異化を追求する。また、別のところではM&Aや提携によって足りないところを補う。自主経営とは、こうした経営判断を自由自在に使い分けていくことです。
フェース・トゥ・フェースのコミュニケーションを基本に、しっかりとした人間関係を築いていくことが、一見遠回りに見えるかもしれませんが、「ポストM&A(買収の次)」で組織を動かしていく要諦だと思います。
経済や社会が休息に変化するときに、戦略(を立てるのに)に時間をかけていたら、できあがったその戦略は、必要なときにはもう遅れてしまっている。だから、だいいたいの方向性が出たらすぐに実行に入る。
実行の現場の波打ち際にトップも入り込んで、戦略を柔軟に変更していかないと間に合わない。
大化けするのが人。人・物・金と言うが、物や金は化けない。人はとんでもない力を発揮する可能性がある。
私自身、海外の最前線に出向いて経営判断するとともに、刻々と変化する現地の状況に即して戦略を軌道修正してきました。これに現場が実行に次ぐ実行で取り組んだ結果、2010年に空調売上高で世界一を達成できました。空調の海外売上高比率は今や60%以上に達します。
M&Aを成功させる4つの要諦
M&A、提携、連携を日常茶飯事ととらえよ。
相手の弱みも補完し、シナジー効果を創出せよ。
買収後の共同チームでグローバル人材を鍛えよ。
お互いの納得感や信頼感の醸成がM&Aの効果を高める。
ダイキンの場合、まず1990年代後半以降、ドイツやスペイン、イタリア、英国など欧州13カ国で現地の販売代理店を買収し、100%子会社化しました。販売特権を与えて当社製品を扱ってもらう、それまでの「ソウルエージェント方式」では、こちらが挑戦的な目標を立てて促しても、代理店がある程度の実績で満足してしまい、戦略の徹底が難しかったからです。このM&Aで得た優秀な人材は2000年代に急成長した欧州市場で中核的な担い手として活躍し、欧州で断トツのシェアを取ることができました。
いま、世の中では市場環境や競争条件が大きく変化する「パラダイムシフト」が起こっています。過去の分析や業界の常識にとらわれていては、もはや戦うことはできません。絶えず現実を見据えながら、実行にこだわり、ビジネスモデルを大胆に変えていく必要があります。経営者には、いわば「答えのないところに答えを出していく」ことが求められているのです。
私はこれまで、「自主経営を貫くが、自前主義には執着しない」という考え方を経営の根幹としてきました。最近、その思いはますます強まっています。自主経営とは、「ありたい姿」や「あるべき姿」を従業員と共有しながら、経営者が戦略の実行局面で幅広い選択肢を持って、主体的に意思決定できることを指します。あるところでは自前主義に徹底的にこだわって差異化を追求する。また、別のところではM&Aや提携によって足りないところを補う。自主経営とは、こうした経営判断を自由自在に使い分けていくことです。
自社に欠けているピースを埋めて補うのは当然として、買収先の強みを伸ばし、弱みも補完することでシナジー効果がさらに高まります。「1プラス1が2以上になる」ような、お互いにとってシナジーが見込まれるM&Aであることが重要です。
M&Aは人材を育成する絶好の機会とも言えます。OYLを買収した時の話です。買収調印直後に技術、製造、販売及びコーポレート部門の中から、第一線で働いていた中堅社員290人を結集し、シナジー創出ワーキンググループのメンバーに任命しました。彼らは買収相手と融合し、成果を生むという、経験したことがないテーマに集中的に取り組みました。OYL側のメンバーとの対話や議論を通じて、直接「異文化」に触れ、これまで希薄だったグローバルな感覚を磨いていったのです。立案した計画を実行に移す局面では、予想外の事態に直面したことも珍しくありませんでした。しかし、そうした経験によって、多くのメンバーが突破力を身につけ、グローバル人材として成長しました。
少々無理はあっても、これからのダイキンを担う人材を抜擢して買収先の国外企業に送り込むという判断は間違っていませんでした。さらに彼らが抜けた国内の部署では、その役割を引き継いだ次の人材が成長するという効果が得られました。「M&Aで時間と人を買う」と同時に、「人材育成の場を買う」とも言えるかもしれません。
M&Aや提携、連携では、他社の力をうまく取り込み、自らの力とする視点が欠かせません。異質なものを組織に取り込むことで、変化に対する柔軟性が広がるとともに、こうした交流から新たな企業文化や価値が生まれ、それが強みとなるのです。
対話によってお互いを知り、理解を深めるという人間関係の基本が、買収後のシナジーを高めるうえで大事だと思っています。ですから、買収後のマネジメントについて、一律の型に当てはめることはしません。これまでの買収では、買収時の経営者とマネジメントの状況などによって、任せてやる気を引き出すのか、本体が引き受けてマネジメントするのか、ケースバイケースで決めてきました。
普遍的な考え方やノウハウなど、優れているものならば、買収側、被買収側にかかわらず、どんどんトランスファー(移転)し合えばいい。お互いの自主性や文化の違いを認め合いながら、一緒にやっていくことでいつの間にか融合する領域が広がって成功する、というのがM&Aの理想型だと思います。
先日、買収したグッドマンの幹部が来日して、まさに膝を突き合わせて侃々諤々の議論を重ねました。買収時に3年間の累計で240億円と想定した定量的なシナジーに加え、新たなテーマの創出も徐々に具体化してきています。しかし、何よりも大事なのは実行の局面です。お互いの納得感や信頼感の醸成がなければ、いかに魅力的なテーマでも絵に描いた餅にすぎません。フェース・トゥ・フェースのコミュニケーションを基本に、しっかりとした人間関係を築いていくことが、一見遠回りに見えるかもしれませんが、「ポストM&A(買収の次)」で組織を動かしていく要諦だと思います。
私は海外拠点について「最適な解は固定的なものとしてはあり得ない」と見ています。震災や洪水、国家間の緊張など不測の事態が起こり得る状況においては、いかなる変化にも柔軟に対応できる体制が求められるからです。
「国や地域ごとに異なる市場のニーズを察知し、それに合った商品を提供すること」「コスト面で競合他社と戦えること」「需要に応じて生産し、品切れや供給過剰を生じさせないこと」。そして、それぞれの生産拠点で徹底的に「現地化」を深めなければ、競合相手に勝てません。
日本のモノ作りの強みは従来、設計から製造に至る工程で部門間が連携して品質改善などに取り組む「すり合わせ技術」において発揮されてきました。デジタル家電など標準タイプの部品を集めて組み立てる「組み合わせ技術」の製品が苦戦する一方で、自動車や工作機械などすり合わせ技術が生きる業種では、日本は強みを維持しています。そうした製品であれば、すり合わせ技術で圧倒的に優位に立てるビジネスモデルを構築し、技術や品質、「匠の技」などを磨き続けることも、世界で勝つ要諦のひとつだと思います。
モノ作りへの姿勢やその原理原則に対するこだわりといった暗黙知は生産現場でこそ伝承されるものです。当社でその中核的役割を担っているのが、現在31人のマイスターと、39人のトレーナーです。彼らはロウ付けやアーク溶接といった領域で高度な技能を持ち、その技能と暗黙知の伝承に情熱を持って取り組んでくれる存在です。彼ら師匠らが国内外の工場や研修施設などで定期的に指導し、戦略技能や暗黙知を移管しています。
自らの技能への自負や誇り、同じ価値観を共有する社員同士としての連帯感や一体感、そこから生まれる師弟関係やライバル関係。こういったもろもろのものが渾然一体となって、特有のモノ作り文化になっていく気がします。こうした文化の醸成は海外で人材を長期的に育成し、技能を伝承するうえで極めて大事な要諦です。
いつの時代でも、製造業の生命線が高い技術力を保持することにあるのは変わりありません。しかし、保持するだけでは競争には勝てない。自社のコア技術が生きる道を模索し、提携や連携、M&A(合併・買収)など、経営のあらゆる選択肢を駆使しながら、自社にとって有利な事業環境を創造することが重要です。
技術を囲い込んで利益を独占しようとしても、いずれは追いつかれるかもしれません。それならば、ある程度開放し、仲間を増やして市場を広げていきながら、そのプロセスで技術の優位性やコスト競争力を武器に大きなパイを奪う。そんなオープン化戦略がいまの時代に合っているように思います。
私は最近、「π字型」の人材という言葉をよく使っています。何かひとつの専門領域を掘り下げるのが「I字型」で、幅広い知識とひとつの専門領域を持つのが「T字型」。そのT字型に、もうひとつ異なる専門分野を別に持っているのが「π字型」の人材です。複数の専門領域を通じた複眼的な思考ができると、技術革新や商品開発につながりやすいと思うんですね。
日本の政府や企業は一般に、国際標準化機構(ISO)などの国際機関を通じた標準化、デジュールスタンダード決定プロセスに戦略的に対応する姿勢が乏しいように思います。しかし、グローバル競争で勝つには、主体的に決定プロセスに参画し、国際ルールを「つくる側」へと回る必要があります。
国際ルールを策定する場ではコミュニケーションが何より重要です。理屈や理論を示すだけでなく、実際に何度も足を連んで説明する。相手の主張や疑問、関心事をしっかりと聞き、それに応えていかなければ信頼は得られません。自社の利益を声高に主張するのではなく、社会全体の最適を考えて導き出した結論を論理性、客観性を兼ね備えて主張する必要があります。
日頃から各国の政府関係者やキーパーソンと交流を深めておくことも大事です。ロビー活動と言っても、お金を払って政治家などにアプローチし、自社に有利な政策に誘導しようとする活動とは違います。当社の環境ロビー活動は、国際機関の関係者や各国の政策担当者、オピニオンリーダーらに、国際ルールや政策の決定に必要な情報を提供したり、当社が改めて調査したりして協力するようなサロン的な活動です。空調への理解が深まれば、偏った情報に基づく政策決定や行き過ぎた規制の抑制にもつながります。
現場の実行力の徹底度合いを左右するのは納得感です。社員の姿を見ていると、納得感があって、本気で夢中になっている時にとんでもない実行力を発揮するんですね。
当社はとりわけ優れた人材の集団ではありません。にもかかわらず飛躍できたのは、納得性に基づくチームワークと、明るく挑戦的な企業風土を築いてきたからです。人の可能性を信じ、その活力を最大限に引き出すことを何よりも重視する。これが「人を基軸」にする経営の本質です。
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