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守島基博の名言44件

わが国企業の人材育成の基本は、今でも現場育成である。仕事の遂行を通じて仕事を覚える。それが基本だ。だが、こうした現場育成は体系づけられたものではないことが多く、現場の状態や現場の上司に大きく依存する。言い換えると、状況が人の育成を可能にしない状態では、現場育成は機能しないのである。
企業と人との関係は、基本は交換関係である。なかでも重要なのは、経営学が「心理的契約」と呼ぶ関係である。企業から大切にされていないと感じ続けた人材は、企業のために頑張って価値ある人材になろうとはしなくなる。
簡単に言えば、今起こっている人材不足は、人材確保を重要な経営課題だと捉え、人の育成と活用を戦略的に行ってこなかったここしばらくの企業経営のあり方の問題点が表面化しているとも言えよう。
日本の企業は、たとえその人が極めて優秀だとわかっていても、社運をかけるような仕事を10年目の社員に任せているだろうか。上司やリーダーは、2回失敗した若者に3回目のチャンスを与え、また本人もその課題(でも、とても重要な課題)を堂々とこなすことがあるだろうか。
一部の外国ではヒーローが継続的に再生産されて、若者の起業やチャレンジの原動力になっている気がする。夢見、憧れるリーダーがいて、多くの若者が動機づけられ、自らもチャレンジするというサイクルが回っている。
現在、タレントマネジメントの議論が盛んである。一般的には優秀層に特化した育成だと理解されている。実際、優秀層の選抜型育成には多くの企業が取り組んでいる。でも、残念我がら、多くは30代前半ぐらいで選抜して、そこから始めて45歳ぐらいで事業部長クラスをつくり上げるような状況であろう。優秀な若手を選んで、30代前半までの育成スピードを上げて、人材確保に取り組んでいるという話はあまり聞かない。これも海外が必ず素晴らしいというわけではないが、私が見聞きする海外優良企業のタレントマネジメントでは、10年目ぐらいまでの優秀層に、意図的にいくつかのかなり大きな仕事をやらせ、そこまでに社運をかけるような仕事を任せることができるように育てる。こういうことをすれば、対象の若者も高い働きがいを感じ、大きく早く伸びるだろう。
仕事を任せて人を育てるという行為は、リスクをともなう行為である。任せてみて、ダメな場合もある。しばしばそのことを恐れて任せることをしなくなる。でも、本来考えるべきは、顕在化したリスクにどう対処するのか。また顕在化しないためにどこまでサポートできるのか、ということである。リスクテークなしの人材育成はありえないという言い方もできる。
人材の他流試合も重要である。仕事には多くのやり方がある。もちろん、自社のやり方が最も有効な場合もある。でも、それはほかと比べてみないとわからない。ほかのやり方を見てみて、自社のやり方と比べてはじめてより有効かどうかが判断できる。井の中の蛙状態では、低いままの自社基準で仕事が進められるかもしれない。方法論としては、他社での仕事経験がある人材の中途採用や他社の人材と直接戦う場面かもしれない。いずれにしても、社内競争だけでは、他社で通じる人材は育たない。
重要なのは、自分の企業の人材がほかの企業でも優秀な人材かということである。逆説的に聞こえるかもしれないが、他社から引き抜きのかかる人材を育てる企業がよい企業なのかもしれない。評価基準を世界化すれば、人材はグローバルな評価基準に基づいて自分を磨く。
人が仕事をするモチベーションにはいろいろなものがある。そして、そのなかには、個人的なものもある。強い思いや志を持つことば、サラリーマンとしては決して、悪いことではない。だが、それが最も大きなモチベーションの源泉になると、企業としては恐怖を抱く。サラリーマンである以上、最終的には、会社の利益を優先してくれないと困るのであり、私憤の大きさのあまり、判断を誤ってもらっては、困るのである。
人というのは、どんなに清廉潔白だと思われる人でも、叩けば少しは挨が出るものである。また、働いていると、挨かそうでないのかわからないものもある。そのため、多くの人は、同僚や部下に半沢直樹のような人間がくることを嫌う。やたらと正義感が強い人が周りにいると、少し居心地が悪いということを考えてみればよい。
人事上の処遇というのは、不思議なものである。外から見ると、なぜその決定が下ったのかわかりにくいことが多い。特に、配置転換や昇進、昇格など、一人ひとりのキャリアに大きなインパクトを与える処遇において、そういう傾向が強い。当たり前だが、一人ひとりのキャリアに大きな影響を与えるからこそ、決定の背後が知りたいということなのかもしれない。だが、企業における人事の多くは、いくつもの多様な要素を考慮した結果であることが多い。いくつもの考慮がつまったものが人事処遇上の決定なのだ。そしてそのことが人事の意思決定を不可解なものにしている。
強みを伸ばし、弱みを直す。人材のマネジメントにおいてよく聞かれるフレーズだが、人事処遇はひとつの決定のなかに、褒めることと叱ることを同時に含めなくてはならない。
人事上の意思決定には、現在と未来のバランスはつきものだ。例えば、人材育成で重要だとされている「修羅場を経験させて人を伸ばす」というのは、端的に言えば、優秀な人に苦労をさせるということである。本人がどう思うかによるが、直近だけを見れば、ネガティブな処遇だと誤解されるかもしれない。
会社が組織である以上、どんなに優秀な人でも、周りがその人間を受け入れないと仕事にならない。もちろん、異端児や尖った人材を活用する組織でなければならないという議論も最近多くなってきた。私も、そうした人材が変革やイノベーションを起こすという主張にある程度賛成する。そういった人材を積極的に活用し、会社の変革をしていくことが必要なのかもしれない。でも、それはリスクを伴った判断だ。その結果、多くの企業は安全を志向し、組織のロジックを優先し、異端児や優秀な人材を活用しない。
働く人は、辞令の裏に込められたよい意図も悪い意図も読み解く力をつけてほしい。そうすることが、企業で幸せに生きていくひとつの道なのだ。
人材マネジメントとは、人の心に働きかけ、幸せにかつ意欲的に会社に貢献してもらうための経営活動である。そのためには、働く人のココロに訴えかける必要がある。
人材輩出企業であるGEやリクルートの人材が他社に買われていくのは、プレゼンの上手さや、パワーポイント資料の綺麗さが理由ではない。事業を構想し、また人をまとめて成果を出す実行力に優れているからである。
2011年3月11日(東日本大震災)から私たちは、これまでの常識を疑うことを余儀なくされた。その中で、もがき苦しみながら、新たな日本の方向性を考えてみなければならない時代に入ってしまったともいえよう。ポイントはこれを好機と見るか、危機と見るかである。そのこと(新たな時代に入ること)自体は決して悪いことではない。経営学的にはパラダイム・シフトのきっかけとなるからだ。
経営者は、単に新たな施策を自社に導入することに注力するのではなく、その新たな枠組み(パラダイム)をまず構築し、その中で新たな試みや施策を導入することが必要になる。経営者の仕事の重要な部分が、自社の社員がものごとを解釈するパラダイムの管理と変革ともいえよう。
いま、日本企業はリーダーシップをいたずらに難しく考えすぎて、かえってリーダーの魅力を減退させる傾向がある。
組織の競争力を維持する「現場リーダー」を議論するときに、米国の教科書に出てくるような、強いリーダーのイメージで人材像や期待値を描くことは極めて危険である。偉人が組織の先頭に立って、よく練られた戦略とさわやかな弁舌をもって、多くの人をぐいぐいと引っ張っていくというのがリーダーのイメージだとすれば、それは極めて限定的なものである。こうしたイメージでリーダーの選別と育成を続けると、リーダーになりたくない若者たちが増える可能性が高い。
いま、組織がリーダーを獲得するために必要なのは、リーダーポストの魅力を増すことであり、その結果、より多くの人がリーダーになりたいと思うことだ。
現場のリーダーシップには、ひとつのベストプラクティスがあるわけではなく、その現場、現場に合ったリーダーシップのスタイルをそこでリーダーポストにある人材が文字通り編み出すことになる。
優れたリーダーシップとは、部下が力を発揮し、チームが成果を出すために、その状況に欠けている要素を補うことだとされている。
リーダーポストにいる人材にとっては、どこかにベストなリーダーシップスタイルがあって、それを探し求めるということではなく、自ら信じるやり方を追求するという自由を与えることである。その状況にピッタリ合った、リーダーシップスタイルの追求は、ほとんどの場合、徒労に終わることが多いし、ないものを探し求める旅は辛いだろう。自分なりのスタイルを追求できると思うだけでも、多くの人にとっては、かなり気が楽になるはずだ。
育成や成長を促す経験は、それが本人のいまの能力より少し高いレベルの経験でない限り、成長を促すことはないし、また、適切な時期に与えないと、チャレンジとして大きすぎたり、周りが過度のリスク感を持つと、中にいる人は委縮して経験から学ぶことができなくなる。
多くの現場リーダーは戦略家であるよりも、翻訳家である。大きな方針は提供されていて、その方針を自分なりの価値観と現場の個別状況に基づいて味付けする力が、現場リーダーにとっては必要な能力となる。
現場のリーダーも自らのビジョンをもって、現場を率いていくことが理想的なのかもしれない。だが、組織である以上、現場のリーダーが自分のビジョンをもって、自律的に仕事を進めることはほとんどない。どんなに自立的といっても、結局はある枠組みの中での自立である。現場のリーダーがやるべきことは、戦略を無から生み出すことではなく、上から下りてきた戦略や方針に、現場に合わせた意味を付けることなのである。
リーダーとはトップマネジメントという言葉で想起されるような一種類のものではない。組織が階層型から、自立・分散・協調型に移行すると、組織のあらゆる階層におけるリーダーの質が、これまでに増して重要になる。
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守島基博(もりしま もとひろ)は、日本の経営学者。専門は労使関係。慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授を経て、現在一橋大学大学院商学研究科教授。1997年から独立行政法人労働政策研究・研修機構特別研究員も務める。財務省 (日本) 財務省独立行政法人評価委員会委員等も歴任。日本人材マネジメント協会幹事、日本組織学会組織科学編集委員会委員。東京財団仮想制度研究所(VCASI)フェローも務める。 1980年 慶應義塾大学文学部社会学専攻卒業 1982年 慶應義塾大学大学院社会学研究科社会学専攻修士課程修了 1986年 イリノイ大学産業労使関係研究所博士課程修了(Ph.D) 1986年 サイモン・フレーザー大学経営学部助教授 1990年 慶應義塾大学総合政策学部助教授
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