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奥田務の名言60件

経営者は天才である必要がない
日本の百貨店は、全く違う2つのビジネスモデルを備えています。商品を自前で買い取って社員が販売する買い取り型と、ブランド単位で売り場を設けて、ブランド側に商品を売ってもらう消化仕入れ型です。前者は粗利が高いけれど、人件費がかかって商品の在庫リスクもある。後者ではブランド側に売り場を与えて、その代わりに売上高の何割かの利益をもらうから、粗利は低いですが在庫リスクはなく人件費も低い。この2つは全く事業構造が違います。そこで消化仕入れと買い取りの組織を分けました。それぞれの売り場でマネジメントが何人必要で、彼らに何を期待するのかをはっきり伝えたんです。当初は非難囂々でしたよ。けれどもそれによって、随分とオペレーションを効率化することができました。
大丸の社長に就任した当時の営業利益率はわずか0.8%でした。これを、松坂屋との統合直前には4.1%、統合を経た直近では、3.6%に伸ばしました。300年近く続く老舗企業の体質を変え、百貨店業を脱してマルチリテーラーになった。斜陽産業と揶揄される百貨店でも、時代に合わせてビジネスを変えれば確実に成長できる。それを具現化した16年間だったと思います。
リーダーシップ、決断力、分析力……。もちろんこれらも不可欠です。けれど、これらが正しく発揮されるためには、ある前提が欠かせません。それが、「烏の目」を持つことです。「烏の目」を持てば、思い込みにだまされず、問題の核心が見えてきます。正しい課題を見いだせなければ正しい解決策も生まれません。私の経営者人生を支えたのもこの視点でした。
経営とは社会科学だと思います。自然科学の世界では、どの国でも「1+1=2」だし、「H2O」は水を指す。しかし経営では、同じ現象が国の歴史や風土、人々の生活習慣などによって変わります。原理原則は共通していても、現場で当てはめるとギャップが出ることもある。
私は日本の百貨店を外から観察して問題の本質を見抜きました。そしてこれを基に経営改革を進めました。変化を先読みできたから、松坂屋と統合してマルチリテーラーに変わることができた。つまり、「烏の目」こそ経営者に欠かせない大切な資質なのです。
大丸と松坂屋の経営統合に向けて、まずは最終責任者を明確にすべきだと思いました。統合では連日、様々な決断を迫られます。誰が意思決定者か分からなければ混乱は必至。社員は誰が最終決断をするのか必ず見るでしょう。責任者が明確でないと、統合がうまくいくはずはありません。
企業の統合で経営者が最も重視すべきことはスピードです。企業統合では、いち早く成果を出さなくてはなりません。「鉄は熱いうちに打て」という言葉通り、互いの気運が高いうちに一気に進めないとモチベーションが下がってしまう。
企業の経営統合で何より怖いのは、ひとつの企業の下に2つの企業文化が根づくことです。いびつな環境が統合後の社風となれば、それこそ改革は難しい。
経営スピードを上げるためにプロジェクトチームを作らないことにしました。日本企業の意思決定の遅さのひとつの原因が、プロジェクトを作ることにあります。何かというとプロジェクトを立ち上げて話し合う。ですが、これでは現場が無責任になります。そこで一切プロジェクトを作らず、すべて通常の業務ラインで話をするように要請しました。財務は財務担当、営業は営業担当が議論を重ねる。そこで出た結論に対して、私が直ちに可否を決める。これだと話が一気に進みますし、何より現場が当事者意識を持ちます。
経営統合のとき、「決してミックスさせてはいけない」と各担当者に伝えました。システム部門などの統合では、どうしても現場の担当者が、2社の長所を混ぜて「いいとこ取り」をしようとします。ですが業務運営やシステムは、ひとつの思想に基づいて構成されています。異なる思想で作られたシステムを、パーツごとに寄せ集めても、必ず破綻が生じてしまう。そうではなく、どちらを残すべきかを徹底的に議論し、まずは片方の方式を基に統合すること。そしてオペレーションが根づいた後で、捨てた方の良いところを修正して部分的につけ加える。これを大前提としました。
経営統合の際、大丸、松坂屋とも担当者が「システムの統合には3~5年はかかる」と訴えました。しかし、これでは全く話にならない。「何を言っているんだ。責任は全部私が取るから思い切ってやれ」と叱咤したものです。松坂屋から見れば、「このおっさんは何を言っているんだ」と思ったことでしょう(笑)。しかし結局、1年でシステム統合を終え、問題は何も起こりませんでした。
あらゆる統合作業の中でも特に気をつけたのが人事制度です。私は大丸時代の改革で、学歴や経歴、性別、年齢を問わない適材適所の人事を進めました。統合でもこれを貫き、大丸と松坂屋の人事制度を一体化することを急がせました。企業で働く人は、誰でも給料や昇進を気にしています。人間はある面では非常に現実的ですから、賃金や処遇は労働意欲の根幹でもある。同じ仕事をしているのに、出身会社が違うことで給与や処遇が変われば、誰だってモチベーションが下がるでしょう。
周囲の誰もが「なるほど、あの人なら」という人材を、積極的に登用しました。私は会社の人事はできる限り公平にすべきだと考えています。人間はどうしても、「好き嫌いで人事をやっている」と思ってしまいがちです。ですから極力それを排除し、きちんとやった人が遇される環境を作りました。その人がどれだけ企業に貢献したかに尽きる。
大丸では、私が社長に就いてから改革を続けてきましたから、徹底した低コスト体質になっていた。ですが松坂屋は後発です。まだまだ無駄が多かった。統合と同時に大丸のコスト管理のプロを松坂屋に送り込みました。コスト管理に厳しい人物なので、大きな軋礫が起こるのではないかと危惧しましたが、松坂屋側の皆さんは、彼の言うことを忠実に進めてくれた。最初は驚いたのでしょうが、どんどんコストが落ちて赤字が減っていく。大丸のやり方を進めると利益が上がると分かったんです。改革は、利益が目に見えて上がると社員がついてきます。すぐに結果が出たので無用な軋轢は起こりませんでした。
統合作業のスピードを支えたのが、毎日開いた早朝連絡会です。これは、オーストラリア赴任時に生み出した仕組みでした。当時私は、国籍や民族、宗教、文化が全く違う社員を束ねなくてはなりませんでした。人間は、顔を合わせていなければ疑心暗鬼になる生き物です。これではコミュニケーションが滞ってしまう。そこで毎朝、部長以上が集まってミーティングを開くことに決めました。些細なことから重要なテーマまで、あらゆる議題を全員でディスカッションし、最後に私が決断を下すようにしたのです。決断を下した理由もその場で説明します。すると日を重ねるこ、とに私の考えが現場に浸透していった。トップの判断基準がどこにあり、何を考えているのか。これらが現場に伝わり、私自身も現場の問題を即座に把握できる。何よりその場その場で決断を下すので、経営のスピードは格段に上がりました。
スムーズな統合を支えたカギであり、私にとって最も大きな経営ツールが朝の連絡会でした。大丸と松坂屋という歴史や文化の違いを乗り越えられたのも、両社の幹部が毎日顔を合わせて話し合ったからだと思います。
日本では長い低迷期を経て、あらゆる業界で企業の統合再編が進みました。スムーズに統合を終えた企業がある一方で、矛盾やいびつな構造を抱えたままの企業も多く見受けられます。失敗の大きな要因が、スピードの欠如だったのではないでしょうか。
私が大丸社長に就いた1990年代後半、日本の百貨店は業界内の戦いに明け暮れていました。しかし2000年代に入ると、ユニクロなどの新しい小売り業態が出現し、一方ではネット通販が台頭した。小売業全体の業際がなくなり、我々はあらゆる業種と戦わなくてはならなくなった。そんな状況で、百貨店の殻に閉じこもっていては成長できません。果敢に百貨店以外の事業を取り込み、ひとつの成長エンジンにすべきだと判断しました。
企業買収では、多くの経営者がただちにシナジー効果を求めたがります。ですがシナジーを出すよりも先に、買収先の企業が投資に値する利益を出すことを優先すべきです。
まずはグループ内の各企業が強くなって、きちんと利益を生むこと。強い企業が集まることでグループの強みも増していく。シナジー効果は、その過程で追求すべきものでしょう。
強みを増すには、成長が期待できる事業を買収する一方で、今後成長の余地が見込めない事業を売却することも必要になります。
会長兼CEOを退く前の最後の仕事として、子会社のピーコックストアを売却しました。この売却によって良い意味で社内に緊張感が生まれました。「赤字を出していては売却されるかもしれない」という緊張感が出たのはメリットでしょう。
明治時代、大丸は大きな経営危機に直面して、呉服屋から百貨店へと姿を変えて生き延びました。同じように、私は大丸や松坂屋という百貨店をマルチリテーラーヘ変え、次の時代につなげる努力を重ねてきました。
今後、小売業の経営環境は、一層厳しくなるでしょう。その中でも、経営者は企業を成長させなくてはなりません。300年、400年続いた「のれん」を守るには、少しでも成長を続けることが重要です。
経営改革とは、行き着くところは、時代や消費者の変化を先取りして、企業のあり方や企業文化、働く人の意識を変え続けていくことです。
通常、事業を存続すべきか否かは傷が浅いうちに判断すべきです。しかし、私が社長に就任した当時の大丸の幹部は、「何とかなる」という根拠のない願望に任せて、ずるずると赤字事業を続けていた。百貨店事業でどんなに稼いでも、赤字事業が利益をすべてのみ込む有り様でした。
会社の再建において赤字事業の整理は基本中の基本です。それなのに、多くの経営者がなかなか整理に踏み切れない。その大きな要因は経営者の覚悟にあります。赤字事業を整理すれば、先輩経営者の功績に傷をつけかねない。自分の実績を否定する可能性もある。こう思い、多くの経営者が不採算部門のカットを大胆に進められないのです。
私を指名した下村前社長は当時、こう背中を押してくれました。「『先義後利』という社是と大丸ののれんさえ守ってくれたら、後は思い切って何でもやってくれ」。この言葉のおかげで、大胆に改革を進められました。
改革に着手した当初は相当な反発を受けました。「人を減らせばサービスの質が落ちる」と訴えられたものです。しかし職務分析を通して必要な業務は押さえてありますから、サービスの質が落ちることはありませんでした。まさに「幽霊の正体見たり枯れ尾花」ですよ。人を減らせばサービスの質が下がると、誰もが勝手に思い込んでいた。けれど私は100%買い取りモデルのオーストラリアでも、もっと少ない人員で百貨店を運営していました。外を知っていたから思い込みに惑わされず、生産性の高い業務運営体制を構築できたのです。
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奥田務(おくだ つとむ、1939年10月14日 - )は平成期の実業家。大丸会長兼CEO。三重県津市出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、1964年に大丸へ入社。8年間大丸オーストラリア社長を務めた後、1995年に日本へ帰国し、取締役に就任。1997年より社長を務め、2003年より現職となる。 社長に就任してからは「負の遺産の整理」と「業務オペレーションの改革」などの守りと攻めの改革による経営で大丸は百貨店業界トップクラスの営業利益額と率を達成するなどの活躍を見せている。 その他には関西経済同友会代表幹事、21世紀臨調顧問会議代表、関西経済連合会副会長、毎日放送監査役、りそなホールディングス取締役などをそれぞれ務めている。
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